vol.14
塩澤 寛司 さん
サンバード
オーナー
鹿児島県
有機野菜を使った、人情味あふれる温かいイタリアン
JR鹿児島中央駅東口から徒歩3分。住宅と店舗が入り混じる静かな路地を進むと、グレーの建物が見えてきます、洋食とイタリアンワインの店「サンバード」。オーナーの塩澤さんのご家族は、祖父の代から料理店を営むというご家系。お父様が育てる有機野菜を使った人情味あふれる温かいイタリアンが美味です。
–ハヤシライスに黒酒。すっと一口、デリシャス
店は2022年で9年目になりました。メニューはイタリアンがメインですが、人気料理の1つにハヤシライスがあります。当店ではこのハヤシライスに黒酒を使っています。黒酒との出会いは4、5年前。当時からハヤシライスはありましたが、味の中に“少し何かが足りないな“という感覚を持っていたときです。お客様としていらっしゃっていた東酒造関係者とのご縁で商品を紹介していただきました。試しに黒酒を使ってみたところ、その物足りなさがピタリと埋まる手応えを感じ、現在まで使っています。
–和食からイタリアンへ。シンプルな味付けが素材を彩る
独立前は鹿児島の和食料理店で勤めていましたが、そちらで洋食を任された経験から洋食の調理法に魅入られ、独立の際は洋食店での開業を選びました。料理に対する考え方、味付け、調理方法など、和食と洋食ではあらゆることが全く違います。イタリアンはオリーブオイルと塩と食材、とてもシンプルです。その中で素材の旨味をいかに引き出し、料理にしていくか、ということ。
–「サンバード」の名。祖父に繋がる“美食“のルーツ
父が小山田で有機野菜を育てていて、店が休みのときに私が自分で収穫しています。父はもともと料理人で飲食店を経営していました。もっと遡ると、祖父が天文館で甲斐の家(かいのや)という店を経営していました。父は鴨池新町でサンバードというレストランを開業した後に閉店。その「サンバード」を復活させたのがこの店です。
–父からのレシピ。昔食べた懐かしのハヤシライス
当店のハヤシライスは父のサンバードで出されていた頃のレシピです。レシピといっても、野菜の種類、グラム数が書かれているだけでアレンジは自分で決めています。子供の頃、父が店の余ったカレーやハヤシライスを持って帰って来てくれるのが家族の楽しみでした。その時の味の記憶をたどりながら、この店ならではのハヤシライスを作っています。お時間を頂きますがライスは注文ごとに土鍋で炊き上げるので、つやつやとした炊き立ての味わいです。お酒の締めに注文されることも多いです。
–“温かみ“の伝わるアラカルト。料理と、感性と
魚料理には「甘鯛の鱗焼き」などもあります。甘鯛の鱗焼きは鱗をつけて焼くことで鱗のクリスピーな食感と身のフワッとした食感のコントラストが魅力です。和食でも定番の素材です。ソテーした身に塩でさっと味付けして、甘鯛のアラでとった出汁に塩、にんにく、トマトを加えたソースと絡めます。店では出来合いの素材、既製品は使わず、ソースも全て1から手作りです。そういった料理への姿勢は、これまで勤めていた和食料理店の現場でしっかり学ばせていただきました。