vol.13
中村 幸仁 さん
株式会社ココ・ファーム
専務取締役
鹿児島県
鹿児島らしさの"甘み"。ここだけの味、ここだけの卵焼き
養鶏場で生産された鶏卵を集卵し、検卵、商品化を手がける施設がGP(グレーディング・アンド・パッキング)センターです。鹿児島市南栄にGPセンターを構える株式会社ココ・ファーム。安心、安全で、新鮮な卵を地元スーパー、小売店に届ける流通拠点を担っています。卵だけではなく、新鮮な卵を使った“卵焼き“も自慢の商品。鹿児島らしい甘みが特徴の卵焼きですが、その原材料に黒酒が?
–15トン。毎日の食卓に欠かせない新鮮卵、流通の拠点
毎日約15トンの卵が当社のGPセンター(鶏卵の選別、包装施設)へ配送されています。鶏は午前中に卵を生む習性がありますが、その卵は次の朝にはこちらへ届きます。当社ではほとんどの卵を鶏卵として出荷していますが、1割くらいは、いわゆるB級品に分類される卵もでてきます。その卵をなんとか活用できないかという思索で商品化が進められたのが卵焼きなどの加工品でした。現在の売上げとしては鶏卵が7割、卵焼きが2割といった比率です。
–鹿児島らしさの”甘み”。ここだけの味、ここだけの卵焼き
10年以上前から卵焼きに黒酒を使っています。当社の卵焼き工場は常に大手NB(ナショナルブランド)さんとの戦いでした。しかし、大手に対して生産量、生産体制で真っ向から立ち向かってもなかなかかないません。そこで私たちは、“鹿児島に特化した鹿児島ならではの美味しさを作ろう“という思いで加工製造を手がけてきました。一般的に、鹿児島の味付けは“甘み“が特長です。卵焼きも、塩味ではなく、甘みのある味付けで、鹿児島らしい美味しさを目指してきました。
–思わぬ困難。加工製品ならではの、卵焼き調理の難しさ
かつて、回転寿司店の厚焼き卵を製造することがありました。「作る量が多くなり、自社では間に合わないため代わりに作ってほしい」というご依頼です。私たちがお店の味を再現しようとレシピを照合したところ、原料には『地酒』とあります。そこで実際に地酒を原料にして試作してみたところ、味が良くなる反面、焦げ目がつきすぎてしまうという問題がでてきました。その上、卵を焼き、真空パック、熱殺菌などの加工を施すと、どうしても卵の黄色が茶色っぽくなってしまう。
–味だけじゃない。“料理の色“にも黒酒の効果
私たちが試したのが、地酒の代わりに黒酒を用いてみることです。すると、卵の色は暗く変色することなく、鮮やかな黄色が保たれていた。加工食品の製造において、見た目の変化を伴わない原料というのは大きな強みです。また、黒酒を用いることで“ドリップ“による卵焼き表面のベトつきが軽減されたのも良い効果でした。ドリップとは、冷凍食品を解凍する際に食材内の水分が外へ流れ出たものです。チルドと冷凍の卵焼きを製造する当社にとってこれはメリットだと言えます。
–ニューヨークの寿司店でも。卵焼き、メードイン鹿児島
当社の卵焼きは海外にも出荷されてニューヨークの寿司店などで使われています。海外へ出荷される商品は全て冷凍です。ただ、冷凍はチルドと比べて長期保存ができる反面、食材へのダメージが大きいため、どうしても味が落ちてしまう難点もあります。その中で、黒酒を用いてドリップを軽減させ、長期保存と味わいの両面を見ながら製造に取り組んでいます。当社の卵焼きは鹿児島県内の大手スーパー、ドラッグストア、沖縄のスーパーの店頭に並んでいますので、ぜひ鹿児島の味、鹿児島の卵焼きをご賞味ください。