INTERVIEW

黒酒愛好家

vol.04

鶴留仁さん

キンコー醤油株式会社
営業部商品開発課課長

鹿児島県

どんな料理にも重宝する黒酒。私たち醸造元も、太鼓判です。

明治20年を原点に、100年以上の歴史を誇るキンコー醤油株式会社。もろみ作りから製品までを一貫生産する、昔ながらの醤油造りを鹿児島で行う醸造元です。代表的な醤油や味噌のほか、めんつゆ、黒豚みそなども製造し、鹿児島の食卓のニーズに合った商品を多数揃えます。その中の数点に、黒酒が使われていました。時代を超えて醸造を守る老舗の、黒酒への思いとは?

–製品に黒酒を使われているとお伺いしました。どちらの商品でしょう?

「黒三杯酢」「天然醸造丸大豆あまくち」「すき焼きのタレ」の3商品に、当社では黒酒を原料に使用しています。黒酒の良さとしては、まずアミノ酸が豊富だということ。精彩な旨味があり、ぐっと濃厚。味の厚みが全然違いますね。味の厚み、というのは、我々食品メーカーが味に重要視する点です。特に、酢など、味の薄い製品を作る際は、醤油などと違って味の濃さで食味を調整することはできませんので、原料本来の味の厚みには気を配っています。その点、黒酒には、芳醇なコクや、旨味の強い存在感があり、当社商品の原料として大きく貢献してくれています。

–さまざまな原料素材がある中、黒酒を採用された決め手は?

黒酒との出会いは、とある県内の畜産業の方のおすすめからでした。「肉と相性抜群のいい調味料がある。鹿児島由来の素材としてぜひ使ってみては」約10年以上前の話になります。商品開発を進めていた私は、そこで初めて黒酒と出会いました。鹿児島の醸造メーカーとして、やはり、商品には鹿児島由来の素材を使いたいという思いが常々あります。また、黒酒のという言葉は、鹿児島のコンセプトカラーでもあります。私たちは試作を繰り返しながら、味はもちろん、鹿児島の風土や香り、伝統をまとう黒酒に惚れ込み、鹿児島の醸造メーカーとして、鹿児島らしい美味しさを開発したいと、原料に黒酒の使用を決めました。

–”鹿児島らしい美味しさ”とはどういったものでしょう?

九州は、一般的に甘い味付けの料理が好まれますよね。中でも南九州では、特に甘い味が好まれます。現在も、鹿児島の上の世代の方々は、自宅に来訪されるお客さんに煮しめなどを作ってもてなしますが、その味付けは、一般的にどこも甘めではないでしょうか。これには、鹿児島の食の甘みが、お客さんへのおもてなしの気持ちも多分に含んでいる、ということもいえるのだと思います。そのような郷土の食への嗜好が、鹿児島の、”三杯酢文化”にも深く繋がっています。 

–三杯酢と密接な鹿児島の食文化。いったいどうしてでしょう?

鹿児島市は酢の消費量が日本一なのをご存知でしょうか。鹿児島の人たちはどんな料理にもよく酢を使います。キャベツにかけたり、ちゃんぽんにかけたり、刺身醤油の中に入れてカツオのたたきにかけたりと、使い方は実にさまざまです。鹿児島の酢は、生産量だって全国有数です。一体なぜ、酢が私たちにとってこれほど身近なのか。それは、気候が関係しています。鹿児島は気温と湿度が高めですよね。それはつまり、食材が腐りやすくなるということ。冷蔵庫のなかった時代、人々は酢を上手に使って、食材が痛まないように保存してきました。この、酢をよく用いる南国の暮らしに、人々の甘みへの嗜好が組み合わさることで、鹿児島の食卓では甘みのある三杯酢が多用されている、といえると思います。

は鹿児島のコンセプトカラー。3つの黒を使った「黒三杯酢」とは?

黒酒を使った「黒三杯酢」は、リピーターの方に定着している商品の一つです。黒酒、黒酢、黒蜜、の3つのを用いた、鹿児島らしい甘みを持つ三杯酢になります。通常、味の濃さというのは水の割合を増減させて調整するものですが、この商品は黒酒の味の厚み、旨味がしっかりとしているので、薄味の酢としても、ぐっと濃厚な深みと、味わいがあります。だから、酢の角が立ち過ぎず、まろやか。黒酒の効果です。どんな料理にも重宝する黒酒。私たち醸造元も、太鼓判です。

PROFILE

キンコー醤油株式会社/明治20年創業のマルエダ醤油と明治40年創業のヤママタ醤油の合併により、昭和46年南栄町に設立。もろみから醤油造りを行い、鹿児島の風土、自然の気候に育まれる製品が鹿児島県民に愛される。キンコー醤油株式会社のHPはこちら→

鶴留仁/キンコー醤油株式会社営業部商品開発課課長。同社製品の商品開発を担当し、プライベートブランド商品、ナショナルブランド商品の両面を手がける。""をコンセプトに、黒酒、黒酢、黒蜜などの地元の素材を積極的に使用した「黒三杯酢」の開発リーダー。

鶴留仁さんの
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